「うちもロッカー設置しようかと…」というご相談のときにお伝えしていること
こんにちは。
【社会保険労務士事務所いろは】です。
表題の通り「うちもロッカー設置しようかと…」というご相談を先日、コンサルタント先の飲食店のオーナー様からいただきました。
「最近、観光のお客さんも増えてきたので、お店の一角にお客様用のコインロッカーを設置しようかと考えていまして……。でも、万が一トラブルになったら怖くて……」
とてもいい取り組みだと思います。
ですが、「場屋営業者」の責任という視点から、少しだけ注意が必要です。
◆「場屋営業者」とは?
たとえば、飲食店・銭湯・映画館・コンサート会場など「お客さんに場所を使わせてお金をもらう商売」をしている人は、民法上「場屋営業者」として特別な責任が課されています。
この「場屋営業者」は、お客さんの荷物が店内でなくなったり壊れたりしたとき、
それが店側の落ち度でなくても、基本的には責任を負わないといけないことになっています(民法第695条)。
◆実際にお店が責任を問われた裁判も
たとえば、こんな裁判がありました。
【事例① 駅のコインロッカーで荷物が盗まれた!(大阪地裁 平成元年)】
駅に設置されていたコインロッカーに荷物を預けたところ、ロッカーごと壊されて盗難被害が発生!
業者側は「防ぎようのない犯罪」と主張しましたが、裁判所は「防犯対策が不十分で過失がある」として損害賠償責任を認めました。
【事例② ゴルフ場の貴重品ロッカーで現金が盗まれた!(東京高裁 平成8年)】
ゴルフ場の受付近くに設置された貴重品ロッカーから現金が盗まれた事案。
ゴルフ場は「お客様自身で管理すべきもの」と主張しましたが、裁判所は「施設側が管理責任を負う」として損害賠償の支払いを命じました。
このケースでも、設置場所や管理の実態が「場屋営業者」類似とみなされたのがポイントです。
◆「高価なもの」は通知がなければ責任ナシ?
とはいえ、民法第696条では以下のように例外も設けられています。
貨幣、有価証券、その他の高価品については、
客がその種類および価額をお店に伝えずに預けた場合には、
たとえそれが盗まれても、お店側に責任はないことになっています。
これはつまり、
💡「ロッカーにお金や貴重品を入れていても、ちゃんと中身と金額を伝えてなければ、責任は問われませんよ」
ということです。
【結論】コインロッカーを設置するなら、この2点で対応!
コンサルタントとしてお伝えしたポイントは、次のとおりです:
- 免責事項を明記すること
→「貴重品・高額品は入れないでください」「盗難・紛失の責任は負いかねます」などの注意書きを貼っておきましょう。
→できれば多言語対応もおすすめです(英語・中国語など) - 自己管理型(鍵を本人が保持)にすること
→スタッフが関与しないロッカー型であれば、「寄託(=お店が預かる)」という構成ではなくなり、責任範囲もぐっと狭まります。
【ロッカーの設置は「親切」だけど「慎重」に】
コインロッカーの設置は、お客様にとってとても便利なサービスです。
ただ、ちょっとした案内不足が損害賠償トラブルに発展するリスクもあります。
今回のように「場屋営業者」としての責任を意識したうえで、
✅ロッカーの運用ルール
✅注意書きの掲示
✅スタッフ教育 などをしっかり整備しておくことが、
結果的にお店を守ることにもつながります。
ご相談いただいたオーナー様も、最終的には
「トラブル防止の観点から、コインロッカーは“自己管理型”で、“免責表示”も掲示して運用しようと思います」
と、前向きにご判断されました。
お客様を思ってのサービスだからこそ、法律とのバランスも大切にしていきたいですね。
ご自身のお店の状況で「どう備えるべきか」を知りたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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